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引用元: 憧れの1人暮らしで隣人に恋した

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1: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 2008/06/17(火) 05:55:20.64 ID:FgtT13KQ0
去年の正月1通の年賀状が来た。
その年賀状には可愛い文字でこう書かれていた。

「明けましておめでとうございます。来年悟くんと結婚します。」

この年賀状の差出人は俺の元カノまりあだ。
まりあとの出会いは俺が憧れの1人暮らしを始めたころに遡る。
まりあは俺が住むマンションの隣人だった。

このスレは、俺が人生で初めて付き合ったまりあとのお話です。

チラ裏だが少しの間付き合って下さい。

4: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 2008/06/17(火) 05:56:57.73 ID:FgtT13KQ0
第1章 おふくろとの別れ

3年前の春。超が付くほどの4流大学を卒業した俺は就職のために1人暮らしを始めた。
ずっと憧れていた1人暮らし。
物件選びのため不動産屋に行くのすらワクワクする。

何件かの不動産屋を廻り
やっと家賃と自分の希望に見合った部屋を見つけた。
間取りは1DKで居住空間は10帖。
まずまずの広さだ。

6: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 2008/06/17(火) 05:58:26.53 ID:FgtT13KQ0
外観も内装も手入れを入れたばかりとかで小奇麗にできている。

部屋が決まったその週末には引越しで実家を出た。

苦労を掛けたおふくろとの別れ・・・。

中・高とグレた俺はおふくろにいつも心配を掛けていた。

8: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 2008/06/17(火) 06:00:26.07 ID:FgtT13KQ0
中学で親父が他界。
それからはおふくろが女手一つで俺を育ててくれた。
そんなおふくろの苦労も知らずに、家の貧しさから俺はグレた。
学校や警察から呼び出しをくらうのは日常茶飯事。

その度におふくろは昼夜を問わず俺を迎えに来てくれた。
そして涙を浮かべながら、必死に頭を下げてくれた。

帰り道、おふくろと並んで歩く・・・。

そしておふくろはいつもこの台詞を言う。

「貧乏でごめんね・・・」

11: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 2008/06/17(火) 06:04:31.68 ID:FgtT13KQ0
引越し業者が俺の荷物を積み込んでくれた。
俺も車に同乗させてもらうことにした。
玄関を出る時俺はおふくろに言った。

「じゃ行ってくるね!体に気をつけてね・・・」

おふくろは昔の様に目に涙をためて俺の手を握った。
そして「これを持って行きなさい」と言って茶封筒を握らせた。

9: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 2008/06/17(火) 06:02:47.13 ID:mF9NUv0v0
中学で親父を亡くしたのに高校でグレるとはなんてやつだ!

10: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 2008/06/17(火) 06:03:53.31 ID:6gl4hOd0O
>>9
正論過ぎて吹いた

12: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 2008/06/17(火) 06:06:05.68 ID:FgtT13KQ0
>>9
いや。親父亡くしたのは中1
半年後には既にタバコ吸って
そこから高校までは結構悪質なグレ方をした

13: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 2008/06/17(火) 06:07:45.92 ID:FgtT13KQ0
おふくろに見送られて俺は車に乗り込んだ。

「今度この家に帰ってくるのはいつだろう?」自分の育った家を眺めてそう思った。

茶封筒の中身を見た。

そこには1枚のメモと10万円が入っていた。
貧しい母に苦しい捻出だったに違いない。
申し訳ない気持ちと有り難い気持ちが交錯する。

メモ書きを見た。そこには・・・。

「元気でいてくださいね。お野菜はちゃんと食べてくださいね。あなたはいつまでも
母さんの子供です。」と書いてあった。

引越し業者にバレずに、声を押し殺して泣くのは大変だった。

17: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 2008/06/17(火) 06:11:52.51 ID:FgtT13KQ0
第2章 まりあとの出会い

「二宮光輝」
俺は郵便受けと部屋のネームプレートに出来るだけ丁寧な字でそう書いた。

こういうことはキチンとしたい。
新しい暮らしを始めるにあたって、俺はそれを1番にすることに決めていた。

マンションの玄関に行って郵便受けにプレートを入れる。
そして部屋に戻ってプレートをはめる。

これでよし。新た人生の始まりだ!

15: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 2008/06/17(火) 06:08:36.84 ID:05gP5LNhO
>>12
悪質なグレ方ってやっぱりトッポの先までチョコが入ってなくてキレたりとかそういうの?

18: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 2008/06/17(火) 06:13:03.12 ID:FgtT13KQ0
>>15
あんまり大きな声では言えないけど
ケンカに刃物は使ってた。
あの時は何考えていたんだろう

21: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 2008/06/17(火) 06:14:53.56 ID:mF9NUv0v0
>>17
待て待て。それは本名か?

22: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 2008/06/17(火) 06:18:28.55 ID:FgtT13KQ0
>>21
似てるけど偽名です

24: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 2008/06/17(火) 06:19:25.93 ID:FgtT13KQ0
引越し業者が運んでくれた荷物を丁寧に分ける。
これは今日1日で終わらないかもしれない・・・。

そう思いながらも地道に部屋作りに取り組む。
気が付くと夕方になっていた。
そうそう大事なことを忘れていた。

ご近所に挨拶をしなければ。

家を出る数日前。俺が引越しの荷造りをしているとおふくろが
「これをご近所さんにお渡ししてね」
と言って丁寧に包装された箱を2つ持ってきた。

中身はバスタオルと石鹸のセットだった。
俺は今どきご近所廻りなんてするかな?そう思いつつもそれを受け取った。

26: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 2008/06/17(火) 06:22:57.95 ID:oWrS/y6WO
カーチャン超いい人・・・

27: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 2008/06/17(火) 06:26:44.32 ID:FgtT13KQ0
別にして損することでもないし、こういうことは「年の功」があるおふくろの
言う通りにしておこう。

荷物整理の手を止め両隣の部屋へ挨拶に向かう。
このフロアは4部屋。
俺の部屋は303号室。まずは301号室に行った。
2度ほどインターホンを押したが反応無し。

留守なのか・・・。

今度は隣の302号室へ。
インターホンを押してみる。しばらく待つ・・・ここも反応無し。
もう1度押して出て来なかったら日を改めよう

そう思った矢先。

インターホンのマイクから「ガチャ」っという音がした。
続けて「はい」という声。
若い女だなと分かる。

30: 二宮 2008/06/17(火) 06:33:52.43 ID:FgtT13KQ0
一応コテにしとく

「今日隣に越してきた二宮です。引越しのご挨拶に伺いました」
女性は慌てた様子で
「すみません。すぐに出ます」と答える。
別に慌てなくていいのにな・・・。
そんなことを思いながらドアの前で待っていた。

1分程度待つとドアがガチャリと開いた。
なぜか半開き・・・。チェーンから覗いているのに気づく。
女性はこちらの顔を伺いながら「はい」と言った。

33: 二宮 2008/06/17(火) 06:41:32.02 ID:FgtT13KQ0
そうか。女性はこれくらい用心しなきゃいけないよな。
物騒な世の中だもん。
「向かいに越してきた二宮です。引越しのご挨拶です。これどうぞ」
俺は母親が用意してくれた箱を出した。

女性は一旦ドアを閉めチェーンを解除してドアを開いた。
「わざわざありがとうございます」
この時女性の全身が初めて見えた。
ドキッとした。可愛かった・・・。正直言って好みのタイプだった。

小さくて少し丸い顔。大きな目。髪は黒くてショート。
身長は小柄だがトレーナーでも分かるほどの巨ニュー。年齢は20歳前後だと思う。
俺は少し緊張した。

35: 二宮 2008/06/17(火) 06:48:06.68 ID:FgtT13KQ0
「これつまらない物ですが・・・・」改めて箱を彼女に差し出した。
「どうもすみません」女性は箱を受け取ってニコッと笑った。

やっぱり可愛い。
女性は

「私は引越しのご挨拶しなかったな。でもちゃんとするべきですよね」
意外にも話掛けてきた。

不意を突かれた会話に少し戸惑いながら
「僕も母親が持たせたものだから・・・」
そういって「これからも宜しくお願いします」で締めくくった。

女性と話すことは出来るが、好みのタイプと話すのは少し緊張する。
彼女は「なにか分からないことがあったら、気軽に聞いて下さいね」
そんな優しい言葉を掛けてくれた。

俺は失礼しますと言って302号室のドアを閉めた。
名前を聞くのを忘れていた。

40: 二宮 2008/06/17(火) 06:58:07.83 ID:FgtT13KQ0
改めて302号の表札を見た。
しかし名前は無かった。女の1人暮らしがバレないための用心なのか?


304号は空室のはずだ。物件案内の時に不動産屋がそう言っていた。
挨拶の必要はない。
部屋に戻ってって少しウキウキした。
あんな可愛い子がお隣さんだなんて。
でもあんまり慣れ慣れしくするのはよしておこう。

変態と思われても住みにくくなる。
廊下で会った時に挨拶する程度がいいな。

41: 二宮 2008/06/17(火) 07:04:34.29 ID:FgtT13KQ0
俺は挨拶廻りのあと少し部屋を片付け近所のスーパーへ買い物に行った。
初めての1人暮らしだ。
これからは自分で食事も作らなければいけない。
夕飯のメニューはカレーにした。
今はこんなものしか作れない。

でも料理初心者の俺は妙にワクワクしていた。

「美味いカレーを作ってやる!!」
子供の頃から料理番組を見るのは好きだった。
料理の知識も多少なりともあると思っていた。

人参・玉ねぎ・じゃがいも・牛肉・牛脂(無料)・牛乳・マッシュルーム・二段熟カレー(辛口)
を買って帰る。

部屋にキーを差し込むのがなんとも良い。
自分の部屋なんだぁ。ここは。
俺も大人の男になったもんだ・・・。

しみじみとそう感じた。

43: 二宮 2008/06/17(火) 07:10:27.66 ID:FgtT13KQ0
初めての料理は散々だった。
まず玉ねぎの切り方が分からなかった。
真ん中で半分に切ったまでは良かった。
その半分を繊維に沿って切るのか?はたまた逆か?
適当に切ってみた。目が痛く涙が出た。

それでもカレーなんて適当にやれば出来るだろ!?
甘かった。水の分量を間違えたのか
妙にバシャバシャの水カレーになってしまった。

ご飯も水が多すぎた。
カレーと合わさるとなんとも締まらない味の食い物になった。
それを1人で背中を丸めて食った。
TVはまだ付いていない。

1人の静かな食事・・・。
お袋の笑顔を思い出した。
少し寂しい気分が襲ってきた。

その時インターホンが鳴った。

46: 二宮 2008/06/17(火) 07:19:15.10 ID:FgtT13KQ0
妙に大きな音なのでビクッとする。
「お客さんだ!でも誰だ??」
なぜか焦ってドアまで行った。

ちゃんとドアホンも付いているのに・・・。

無防備にドアを開けた。
そこに立っていたのはオタクの男だった。

こいつも20歳くらいか?
ちょいピザで髪は妙にベタとしている。
肌も油ぎっていた。
でかいメガネを掛けているのだが、それが少し曇っている。
背も低い160cmあるかないか??

「誰だ?コイツは?」心の中でそう思った瞬間。

「301号の油田ですが・・・」
そいつはボソリとそう言った。

「ああ・・・」

そういえば買い物に出かける時に留守だった
301号のドアポストにメモ書きを入れたっけ。

48: 二宮 2008/06/17(火) 07:20:37.05 ID:FgtT13KQ0
「303号室に引っ越してきた二宮です。
改めてご挨拶に伺います」

大体こんな内容だった。

俺は「ちょっと待ってて下さい」と言って一旦部屋に入り
おふくろが用意してくれた
バスタオルと石鹸のセットを取ってきた。
それを油田に渡し「よろしくお願いします」と言った。

油田は「はぁ・・・どうも」と言ってそれを受け取り
301号へと戻っていった。

若い奴が多いな。このフロアは。
そんなことを考えながらまた不味いカレーを頬張っていた。

51: 二宮 2008/06/17(火) 07:29:04.88 ID:FgtT13KQ0
しばらくすると
ピンポーンとまたインターホンが鳴った。

「誰だよ!また油田か?」
面倒くさいなぁと思いつつ今度はドアホンで応答した。

受話器から若い女の声がした。
「新田です。」
新田?誰だ?
「隣の新田です」

隣のあの可愛い子だ!心臓がバクバクする。
あの子は新田という名前なんだ!
俺は慌てた様子を悟られないように「少し待って下さい」と言って
受話器を置いた。

あの子が一体なんの用なんだ?

50: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 2008/06/17(火) 07:28:51.53 ID:twoZhQ/f0
なんか凄いスイーツ臭がするんだがこのスレ
読んでないが

52: 二宮 2008/06/17(火) 07:29:40.22 ID:FgtT13KQ0
>>50
いや。間違いない

55: 二宮 2008/06/17(火) 07:37:50.95 ID:FgtT13KQ0
色々考えつつドアを開けた。
新田さんはニコリと笑いながら
「これカレーです。引越し初日で大変でしょ?温めて食べて下さい」
そう言ってカレーが入ったビニールケースを手渡してきた。

俺は驚いた。
こんなご近所付き合いが本当にあるんだ・・・。
田舎の方ではありそうな話だが
人間関係が希薄になったといわれる現代社会において
ましてやこんな若い子がそんな文化を継承しているとは。

新田さんは「あの・・・。ご飯ありますか?」と聞いてきた。

俺はこれ以上迷惑を掛けてはいけないと思い。
「あります。大丈夫です」と答えた。

新田さんは「容器はドアの前に置いておいて下さい」と言うと
部屋へ戻っていった。
俺は早速そのカレーを食べた。
新田さんのカレーは美味しかった。
俺のカレーとは比べ物にならなかった。
適度にトロみもあった。

食後、俺は近所のコンビニで飲み物の買出しに出た。
そこで運命の再会をした。
この再会が俺の1人暮らしライフを一変させる。

56: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 2008/06/17(火) 07:42:20.05 ID:Wvvc+nKU0
東京タワーのパクリかね?

58: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 2008/06/17(火) 07:44:07.31 ID:+gvhygIvO
東京タワーっぽいか?

61: 二宮 2008/06/17(火) 07:45:10.79 ID:FgtT13KQ0
>>56
あれは田舎から都会
俺はまぁまぁ都会からまぁまぁ田舎

63: 二宮 2008/06/17(火) 07:54:57.56 ID:FgtT13KQ0
第3章 油田という男

コンビニに入る。
チラッと雑誌コーナーの前を通るとなにやら見覚えのある姿が。
立ち読みしているその男は・・・。

油田だった。

マイナーな怪しいマンガ雑誌を立ち読みしている様子だ。
俺はためらった。挨拶すべきか?
気づかぬフリでやり過ごすか?

でも後で油田に気づかれ
無視したと思われのもウザったい。

俺は油田に近づくと「こんばんわ」と声を掛けた。
油田はこっちを向くとメガネの奥に
キョトンとした瞳を泳がせ。
「ああ・・・どうも。こんばんわ」とボソリ・・・。

終わりでいいかな?

64: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 2008/06/17(火) 07:57:33.92 ID:mF9NUv0v0
なんという展開wwwww

コンビニで新田さんに会ってフラグたつかと思ったじゃねぇか!

65: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 2008/06/17(火) 07:58:51.83 ID:nnkGzivJ0
>>64
だから油田とフラグなんだろ?

66: 二宮 2008/06/17(火) 08:03:52.45 ID:FgtT13KQ0
俺は「それじゃ」と言ってその場を離れた。
数本の飲み物を購入しレジに向かう。
すると俺の後ろに油田が並んだ。

こうなると無視できなくなる。
空気読んでもう少ししてから並べよ!心の中でそう呟く。

俺は仕方なく話しかけた
「油田君はあそこのマンションいつから?」
確実に年下だろう。タメ語でOKだ。

「大学入った時からだから・・・。1年くらいです」
ということは今が2回生。
20歳前後はまんざらハズレでもなさそうだ。

「あそこに住むのになにか注意する点あるかな?」
話すことが無いので無理やり話題を作る。
「う~ん。そうですねぇ」
油田が答えようとした瞬間。

69: 二宮 2008/06/17(火) 08:09:25.48 ID:FgtT13KQ0
「次の方どうぞ!」レジのお姉さんに促された。
会話途中の中断。

これは会計が終わった後も油田を待つ流れなのか?
タイミングが悪いよ。

そう思いつつ会計をする。
油田はさっさと答えを言えばいいのに
律儀に俺の会計を待っている。

結局俺は油田を待つ事にした。

油田が会計を済ませると
どちらからともなく一緒に店を出て並んで歩いた。
マンションまで10分程度。
俺の頭は話題を探すのにグルグルと回転していた。

72: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 2008/06/17(火) 08:15:44.03 ID:mF9NUv0v0
レジのお姉さんが新田さんとかそういうオチじゃなかったか・・・

73: 二宮 2008/06/17(火) 08:17:28.70 ID:FgtT13KQ0
2人で歩きながら油田はボソッと
「あそこで注意する点は・・・ないですね」と言った。
ああ。そうなのね。もっと早く答えて欲しかったよ。

川沿いを歩く。
土手には桜が植えられていて、この時期は夜桜が綺麗だった。
俺は今後、幾度となく通るこの川沿いを歩きながら
この街に決めて良かったなぁ等と考えていた。

俺は隣を歩くオタクに話掛けた。
「ウチさぁ。まだテレビ付けて無いから暇なんだよねぇ」
俺はほんの世間話程度のフリだった。

しかしその瞬間油田のメガネの奥が一瞬キラリと光った。

「それじゃ・・・ウチに遊びに来ます?」

75: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 2008/06/17(火) 08:20:08.75 ID:0vuNNNn0O
フラグキターー

76: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 2008/06/17(火) 08:20:50.38 ID:N3HfD37LO
アーッ

77: 二宮 2008/06/17(火) 08:22:14.02 ID:FgtT13KQ0
マジかよ!?そんな社交性あるの?このオタク。
「え・・・ああ。そうだね・・・」
ダメだ。不意を突かれすぎて上手い断り文句が出て来ない。

「マンガも結構ありますし、気に入ったのがあれば貸しますよ」
なおも油田はガンガン押してくる。

冷静な時なら「片付けが済んでないから」等の言い訳も思いついただろう。
しかしこの時の俺は
「じゃ・・・少しだけお邪魔しようかな?」と答えていた。

言った瞬間激しい後悔が押し寄せてきた。

「ゆっくりしていって下さいよぉ」

粘っこい口調でそういった油田は不気味な笑顔を浮かべていた。

81: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 2008/06/17(火) 08:26:10.41 ID:mF9NUv0v0
こっからどうやってまりあに持って行くか楽しみだな

85: 二宮 2008/06/17(火) 08:30:27.72 ID:FgtT13KQ0
俺と油田はマンションの入り口に到着した。
気が重い・・・。
2人でエレベーターを待ちながら考える。

なんでこんなことになったんだ?

どこにミスがあったんだ?

すると到着したエレベーターから女の子が降りてきた。

新田さんだ!

今は髪を髪留めで束ねている。やっぱり可愛い。
両手にゴミ袋を持っていた。
そうか今日はゴミの日だ。

俺はカレーのお礼を言わねばと「さっきはどうも・・・」と言いかけた瞬間
意外な言葉を聞いた。

「やぁ!ゴミ出し?」
爽やかに新田さんに話掛けた人物。

油田だった。

89: 二宮 2008/06/17(火) 08:39:31.14 ID:FgtT13KQ0
俺はお礼の言葉を飲み込んだ。
このオタク・・・新田さんとやけに慣れ慣れしくないか?

「こんばんわー。ゴミ回収明日だよ。油田くんも今晩中に出したほうがいいよ」
新田さんも笑顔で返す。

えええーーーーーーっ!!!???

この2人はどうやら相当親しい様子だ。

普通ならお互い「こんばんわ」で終わりじゃないか?
しかも「油田くん」と読んでいる。
これは2人の新密度を如実に物語っていた。

俺と油田はエレベーターに乗り込んだ。
俺は新田さんに頭をペコリと下げる程度しか出来なかった。
隣のオタクは「ばいばーい」等とほざいていた。
新田さんも俺に頭を下げた後
油田に手を振って「またね」と言っている。

90: 愛のVIP戦士@全板人気トナメ開催中 2008/06/17(火) 08:41:39.00 ID:mF9NUv0v0
>>1の文才に惚れた

これってフィクションだっけ?

92: 二宮 2008/06/17(火) 08:45:07.55 ID:FgtT13KQ0
>>90
完全実話だよ

93: 二宮 2008/06/17(火) 08:47:57.26 ID:FgtT13KQ0
俺はエレベーターの壁にもたれ掛かり
オタクの後ろ姿を眺めながら
フリーズしていた。

エレベーターが3階に到着する。
すぐ前が油田の部屋だ。
油田がガチャガチャとカギを開ける。
この後この中でこの男と数分を共にするのか。

考えただけで気が滅入った。

油田の「どうぞ」という言葉に促され室内に入る。
俺は目を疑った。
こんな部屋が現実にあるのだ。

壁一面に張られたアニメポスター。
なにやらピンクの髪をした女が
短いセーラー服のスカートから太ももを出している。

またあるポスターは黄色い髪をツインテールに束ねた
女の子がピースをしている。

そんなポスターが壁一面に張られていた。

そうだ。油田は外見だけでなく
正真正銘のオタクだったのだ。

99: 二宮 2008/06/17(火) 08:57:49.90 ID:FgtT13KQ0
アニメといえばサザエさんくらいしか観ない俺には
1人として名前の分かるキャラクターはいない。

棚に目をやる。

例外になく美少女?のフィギアが所狭しと並んでいる。
本棚には同人誌?と思われる雑誌が丁寧に並んでいる。

借りたい本などこの中にあるワケが無い。

「その辺適当に座って下さい」
油田に促されてとりあえず腰を下ろした。
俺は小刻みに震えていたかもしれない。

中・高と散々ケンカをしてきた俺だが
この恐怖心はそれらとまた違ったものがあった。

なにをされるのだろう?
単純に湧いてくる恐怖心を拭い去ることが出来ない。

当の油田は、こんな部屋に住んでいるのに
俺に見られても恥ずかしい様子は全くないようだ。

その心理がまた新たな恐怖を生み出す。

「コーヒーでも入れてきますね」台所に消えていく油田。
コーヒーなど入れられた日には帰るに帰れない。

「あ・・・。どうぞお構いなく!」つい敬語になってしまう。

102: 二宮 2008/06/17(火) 09:07:40.99 ID:FgtT13KQ0
しかしそんな俺の言葉はお構いなしに
油田はカップを2つ持って出てきた。

「どうぞ」と言ってその1つを俺の前に置いた。
飲む気になれない。

何を盛られていても不思議はない。
話題が見つからない。
しかし油田はそんなこともお構いなしにコーヒーを啜っている。

そうだ!新田さんについて聞いてみよう。
なぜこのオタクが新田さんと親しげな関係なのか?
それはおおいに気になるところであった。

「そ・・・そうだ。油田くん。さっきすれ違った新田さん。
隣の部屋の。親しいの?」

油田は上目遣いに俺を見るとニヤリと不気味に笑い。

「ああ・・・。まりあちゃんですね。同じ学校なんですよ」

ま・・・まりあちゃん!!??

104: 二宮 2008/06/17(火) 09:15:39.07 ID:FgtT13KQ0
この小デブ。言うに事欠いて「まりあちゃん」だと!!

油田は続けて「そんなことより・・・」

そ・・・そんなことより・・・なんだ??

「こっち系は興味あります?」
そういって右手に持っていたのは
なにやら美少女?のアニメのDVDだった。

「いや。ごめん。全く無い」
俺は即座に答えた。
なにそれ?とでも言おうもんなら
どんな説明を受けるか容易に想像できる。

「二宮さんは・・・。そうでしょうね。フヒヒ」
フヒヒの意味がよく分からない。

そういうと油田は収納の奥をゴソゴソと探り
1つのダンボール箱を出してきた。

「これ貸しますよ。」そういってダンボール一杯に入った
「はじめの1歩」を俺に渡した。
「50巻くらいまでありますよ」
そんなことより新田さんの話は??


105: 二宮 2008/06/17(火) 09:15:58.85 ID:FgtT13KQ0
「返すのはいつでもいいんで」
そういって油田はニヤリと笑った。

これ以上ここにいても新田さんの話は聞けそうにない。
それならばサッサと本を借りて退散したほうが得策だ。

「ありがとう。それじゃ。お邪魔しました。」
俺はダンボールを抱えてそそくさと油田の部屋を後にした。

この日を境に俺と油田の距離が急速に接近していく。
しかし、この時の俺にそんなことを知る由も無かった。

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